「社内FAQ」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
社内FAQとは、社内のよくある質問に回答し、まとめておくことです。
質問に対応する従業員にとっても、質問する従業員にとっても、業務をより便利にしてくれる仕組みであり、実際に業務を効率化できた事例も豊富にあります。
「自社でも社内FAQ作りに取り組みたい」と考えた場合、どのような手順が必要なのでしょうか。
今回は、効率的な社内FAQ作りについて解説します。
正しい考え方や必要な手順を踏まえて、しっかりと効果を見込める社内FAQ作成・運用に取り組みましょう。
目次
社内FAQとは
社内FAQとは、社内でよくある質問を回答し、まとめたものです。
申請の手続きや業務に関する質問など、日々従業員が持つ疑問が各部署に寄せられています。
この質問の数が膨大になると、担当者はそれに答えるだけで多くの時間が割かれてしまい、本来の業務ができなくなることもあります。
こういった状況を改善するために、従業員がある程度自己で疑問を解決できるよう、社内FAQを設置します。
昨今では、社内問い合わせだけでなく、マニュアルとしても活用されています。
社内FAQを導入するメリット
社内FAQを導入することで、従業員の業務負荷を軽減させ、スムーズな仕事を促せます。
業務効率化としても様々な効果あると言えるでしょう。
社内問い合わせの件数が減る
人事や労務・経理に関する質問など、社内の中でも従業員の不明点は多くあります。
これらを個人個人で対応していると、処理の時間が膨大にかかります。
規模が大きく、人数の多い会社であればあるほど、この質問回答の時間に多くの時間が割かれているといえるでしょう。
社内FAQを導入し、ある程度は従業員自身で自己解決できる仕組みを整えれば、これらの問い合わせ件数が圧倒的に少なくなります。
社内問い合わせ数の軽減として、社内FAQを導入し、実際に効果を得られている事例は多く存在します。
従業員は365日24時間疑問を解消できる
社内問い合わせを有人で対応していると、勤務時間内でしか対応できません。
社内FAQをシステムとして設置しておけば、営業時間や勤務時間に関係なく、社員は疑問を解消できます。
土日や祝日、休暇にも関係ないので、属人的な対応になりがちなシチュエーションも解決できるでしょう。
昨今では、時間や場所を問わないフレキシブルな働き方が実践されている企業も少なくありませんが、そういった企業でも、問題なくマッチしやすい仕組みでもあります。
知識やノウハウの共有化ができる
社内FAQは、問い合わせ対応としてだけではありません。
コールセンターなどの、様々なイレギュラー対応が想定される職種におけるマニュアルとしても活用できます。
それぞれに起きたイレギュラー時の対応や、より効率的に業務を進められるノウハウをFAQとしてまとめておけば、経験の浅いスタッフでもすぐに参考にできる環境が整います。
人に聞かなくても、ある程度は自己解決できるので、新人教育の手間も軽減されます。
マニュアルが確立していない場合はもちろん、基本のマニュアルを踏まえ、さらに一人ひとりのスキルを高めていきたい場合やスキルの均一化にも有効です。
社内FAQの作り方手順
実際に社内FAQ作りに取り掛かろうとした場合、何から始めていけばよいのでしょうか。
順を追った効率的な手順を踏まえることで、漏れのないFAQ作りを目指せます。
社内の事前調査をおこなう
まずは、自社の中で起こっている不便や課題を調査しましょう。
- 管理部が社内問い合わせの件数が多くて業務過多である
- 申請の手続きが複雑でわからない従業員が多い
- 社内のマニュアルが整っていない
- 新人教育において質問が多く、指導者が忙しくなっている
こういった課題は、社内FAQの導入で解決できるかもしれません。
このような事前調査を徹底的におこない、社内FAQ作りに活かしましょう。
事前調査をおこなうことで、自社にあったFAQとはどんなものなのかを明確にしていくことができます。
社内FAQのツールを選定する
社内FAQを実際に導入しようとなると、ツールとしての選定が必要です。
大きく分けると3つの種類が挙げられます。
- エクセル
- 社内FAQ作成ツール
- チャットボット
それぞれ費用面・機能面における特性やメリット・デメリットがあります。
事前調査を踏まえ、どのツールを使うのがベストなのか検討します。
社内FAQ作成ツールやチャットボットツールも、様々な企業から提供されており、特性が異なるため、より従業員が使いやすいツールを選定する必要があります。
FAQの質問と回答をまとめる
具体的に従業員の不明点を解決するFAQ作りに取り掛かります。
外部ツールを導入する場合には、テンプレートがある場合もあるので、それを活用するのも大変便利です。
乱雑にFAQを並べるのではなく、業務の種類やカテゴリに分けながら、運用後も見やすいFAQを目指しましょう。
エクセルなどを使い、自社で1からFAQを作成する場合には、こうした見やすさや使いやすさも考慮する必要があります。
運用開始
完成した社内FAQを実際に運用していきます。
ただリリースするだけでは、従業員が社内FAQの存在に気づかず、あまり使用してもらえないかもしれません。
確実に質問を社内FAQで解決してもらえるよう、周知徹底も重要です。
- 社内報に掲載する
- 社内コミュニティープラットフォームに載せる
- 社内にポスターを張る
- 質問された際に社内FAQへ促す
など、社内FAQの存在を広く告知する努力をしましょう。
せっかく作成した社内FAQも、利用されなくては意味がありません。
効果測定・内容改善
運用を開始した後も、効果測定をおこなうことが重要です。
- どれくらい利用されているか
- 以前に比べて有人対応は減っているか
- 質疑応答の質は良質であるか
- 求められている情報をすぐ提示できているのか
など、様々な指標を基に、使いやすいFAQとして活用されているのか随時調査が必要です。
自動分析ツールを使用したり、社内アンケートを取ったりして、その成果を確認してみましょう。
もし不備や至らない点があれば、改善していくことで、さらに使い勝手のいい効果的なFAQを目指せます。
社内FAQ作成ツールの種類
社内FAQ作りができるツールは、主に3つが挙げられます。
それぞれの特性やメリット・デメリットを解説します。
エクセル
エクセルは、どこの企業でも使用している一般的なツールです。
導入費用や特別な知識なども必要なく、誰でも簡単に社内FAQ作りに取り掛かれる点がメリットです。
「とりあえず試しに社内FAQを作成して、その有効性を確認したい」「費用をかけずにスモールスケールでスタートしてみたい」という場合であれば、手始めにエクセルで作成してみるのも一つの手です。
しかしながら、誰でも改変できてしまったり、複製できてしまったりと、ファイル自体の管理があやふやになってしまうこともあり得ます。
またより使い勝手の良いFAQを目指すのであれば、見やすさや使いやすさにも自身で配慮して作成しなければなりません。
FAQ作成ツール
「エクセルでの作成は何かと面倒」という場合には、専用のFAQ作成ツールを導入するのが良いでしょう。
想定される質疑応答テンプレートが用意されていたり、CSVを流し込むだけでFAQが完成したり、社内FAQ作成の手間が大きく省けます。
見やすさに長けた検索性も使い勝手よくデザインされているので、自身で考慮する必要がありません。
導入にあたっては一定の費用が必要となるのはもちろん、ベンダーも複数の業者があるので、自社に合っている業者選定が重要です。
チャットボット
一般の問い合わせ対応としてよく活用されているチャットボットで、社内FAQを作成することも可能です。
普段から頻繁に利用しているチャット形式であることで、利用者にとっても利用ハードルが低く、使い勝手もいい点が大きなメリットです。
AIチャットボットであれば、利用者の質問履歴などから、より良い回答を分析し、ある程度自動で精度の向上も目指せます。
こちらも様々なベンダーより提供されており、性能や特徴も幅広いので、費用を含め、自社に合ったツールはどんなものか、しっかりと吟味する必要があります。
効果的な社内FAQの作り方と運用のコツ
社内FAQは、完成までが目標ではなく、日常的に使用してもらうことで、担当者の業務負荷を軽減することが最終的な目標です。
効果的な社内FAQの作成と運用を目指して、ポイントを意識しておきましょう。
事前調査をしっかりとおこなう
社内FAQを作るにあたっても事前調査が非常に重要です。
何が問題となっているのか、何を改善すればいいのか、社内すべての部署における課題や状況を徹底的に確認しておきましょう。
社内FAQ作りも明確な目標を以っておこなうことで、より効果的な運用に繋がります。
この事前調査の内容は、目標設定だけでなく、適切なツール選定や告知方法にも活かせます。
利用者の使いやすいツールを使用する
社内FAQを利用する従業員にとって一番利用しやすいツールを選定するようにしましょう。
利用者が不便で使いにくいFAQは、利用頻度も減ってしまい、現状を解決できません。
社内FAQは頻繁に使われてこそ、その成果を発揮します。
「新しいツール」「便利なツール」に惑わされず、自社の状況に合ったツールを選定するように心がけましょう。
従業員への周知徹底をおこなう
社内FAQが出来上がっても、その存在が認知されていなければ、利用してもらうこともできません。
単にお知らせをするだけでなく、利用者が必要となる箇所での訴求が大切です。
また日頃から、社内FAQへ促す習慣も必要でしょう。
社内FAQの作成に力を割きがちですが、本当に大事なのはその後の運用です。
社内全体でしっかり活用できる環境を整え、効果的に業務効率化を目指していきましょう。
ユーザビリティ―の改善を怠らない
1回で理想の社内FAQが出来上がるとは限りません。
事前調査を踏まえたとしても、至らない点があったり、求められた回答をすぐに導けなかったりする可能性もあります。
また周知徹底に不足があったり、使い勝手に不便があったりすることも考えられます。
社内FAQをリリース後も、適切に使われているのか常に効果測定を怠らないようにしましょう。
データ分析で利用率や回答の正確性を確認することはもちろん、社内アンケートを取り、具体的な課題や不足点をヒアリングするのも有効です。
効果測定やアンケートでわかった課題を一つひとつ解消していくことで、よりユーザビリティ―や精度の高い社内FAQを構築していくことができます。
社内FAQの成功事例
実際に社内FAQを導入したことによって、業務効率間に成功した企業事例を紹介します。
導入前の課題、導入の手法、導入後の成果に分けてみていきましょう。
サッポロホールディングス株式会社
サッポロホールディングス株式会社では、社内問い合わせの件数の削減と業務知識やノウハウの共有を目指し、社内FAQを導入しました。
ただ社内FAQを導入するだけでなく、より利用者が使いやすいよう、FAQテキストや導線にもこだわってFAQ作りをおこなうことで、利用率を上げて業務効率化に成功しています。
導入前の課題
・人事・総務・経理・ITなどの間接部門では、社内の問い合わせ対応が業務の1/3を占めていた
・知識やノウハウの属人化
・平均年齢が高く、蓄積された知識やノウハウが失われる危機に
・各部署のFAQが正しく運用・管理されていない
導入内容
・FAQシステム「OKBIZ. for FAQ」を導入
・利用者の立場に立って線も女御を使わないFAQ作りを意識
・FAQの入り口は利用者の見つけやすいところに設置
・よく見られているFAQをあらかじめ提示する
・社内アンケートを取り、至らなかった点はすぐに改善する
導入後の成果
・質問が殺到されると思われた「Windows 10入れ替えプロジェクト」で問い合わせコール件数は1,431件に納まった
・FAQサイトの閲覧数は3か月で16万件に
・チャット問い合わせの利用数は週に100件以上・回答率は60%程度を維持
・回答にたどり着いた人のアンケート結果では、8~9割が「参考になった」と回答
株式会社工進
株式会社工進では、コールセンターにおけるオペレーターのスキル均一化と、社内情報の集約を目的に社内FAQの導入を進めました。
同じような情報を必要としている部署すべてに目を向けて、部署を超えた情報活用をおこなうことで、コールセンタースタッフのスキル向上だけでなく、営業や営業事務など別部署での対応の幅も広がりました。
社内FAQの一部を一般公開することで、問い合わせ件数の削減にも繋がっており、一石二鳥な情報活用に成功しています。
導入前の課題
・コールセンターにおけるオペレーター各人のナレッジが共有されておらず、属人的な業務であった
・人によっては手元の資料を参照にすることも多く、非効率な業務であった
導入内容
・FAQシステム「OKBIZ. for FAQ」を導入・営業・営業事務・コールセンタースタッフ・修理センタースタッフ各位が所有していた知識や紙ベースの情報を一か所にまとめた
・図番やPDFなどの資料も検索できるようにした
・社内用FAQの中でもお客様に公開できるものを一般公開とした
導入後の成果
・どのオペレーターでも的確な回答・同じ回答ができるようになった
・各所でナレッジ共有ができたため、それを活かしてどの部署でもクレーム対応ができるようになった
・散乱していた情報を集約でき、全社共通活用を実現
・一般のお客様対応においてもコール数が前年比で50%削減
株式会社ジャパンクリエイトグループ
株式会社ジャパンクリエイトグループは、複数の課題をチャットボットによるFAQの導入によって解決しています。
マニュアルをチャットボット化することで、教える側・教えられる側双方とも、情報を探しやすくなったといい、スムーズな教育現場を整えています。
テキストだけによる受け答えではなく、画像や動画を使うことで、質問者の理解を深めています。
導入前の課題
・紙のマニュアルを電子化したい
・問い合わせフローが不明瞭であった
・問い合わせ対応に時間がかかっていた
導入内容
・AIチャットボット「KUZEN」を導入
・各部署での質問内容をエクセルを使って精力的にまとめた
・チャットボット内に特別フローを作成し、動画や画像での説明を多く設けた
導入後の成果
・一次窓口の自動化により、問い合わせ対応の工数が減少
・動画の閲覧数が向上
・チャットボット内の答えられなかった場合の問い合わせフォームからの連絡が増加
株式会社LIFULL
株式会社LIFULLでは、社内の情報整理と問い合わせにおける課題解決を目的に、AIチャットボットを導入しました。
すぐに求めている解答が得られないといったケースもありながら、都度チューニングをおこなうことで、運用後の課題も一つひとつ対処しています。
導入前の課題
・社内のナレッジツールが増え、情報が散乱していた
・「どこにあるのか、誰に聞けばいいのかわからない」という質問者側の問題と、「同じ質問が来る」「マニュアルや掲示板を活用してもらえない」という回答者側の問題が社内に存在
導入内容
・KUZENのAIチャットボットを導入
・バックオフィス10部門以上のFAQをまとめてチャットボットに投入
・似た質問や似た言葉による回答の差異を都度調整
導入後の成果
・社内アンケートにより認知度は8割、利用率は7割に
・「また利用したい」という従業員も8割以上
・「知りたいことがすぐわかる」という声もあり、従業員満足度の向上とストレス軽減に役立った
まとめ:社内FAQは正しい作り方と運用の仕方を意識して効果的に使いこなす
「社内FAQは質疑応答をまとめるだけでしょ」と考えがちですが、しっかりと活用される社内FAQ作りには調査や工夫が必要です。
その場しのぎの社内FAQでは、根本的な問題の解決には至らず、業務効率化に繋がることは難しいと言えます。
社内の状況をちゃんと考慮し、目的を持った社内FAQの作成と運営が、効果的な成果を実現します。
「社内FAQを作ること」を目標とせず、「社内の課題を解決すること」をゴールとして見据え、PDCAを回しながら運営していくことが大切です。
株式会社コンシェルジュでは、社内FAQとしても活用できるAIチャットボット「KUZEN」をご提供しています。
プログラミングの知識も不要で、管理者も利用者も使いやすいチャット式の社内FAQを実現できます。
AIチャットボットを使った社内FAQについてもっと知りたい方は「お問い合わせ」よりご相談ください。