業務効率化を達成するために指標・KPI設定を正しくおこなおう

業務効率化を達成するために指標・KPI設定を正しくおこなおう

費用削減や働き改革の一貫として、業務効率化を目指す企業も多いはず。

効果的・効率的に業務効率化を目指す上でも、目標の設定は重要です。

今回は、業務効率化を達成させるための指標やKPIの設定の流れについて、具体的に解説します。

目次

    業務効率化の目標として数値的指標が必要

    業務効率化の目標として数値的指標が必要

    「残業を減らす」「費用を削減する」といったあいまいな目標設定では、達成できているのか検証するのが難しく、主観的な判断になってしまいがちです。

    業務において目標が達成されているかどうかを判断する基準は、まずは数値といっても過言ではないでしょう。

    業務効率化を目指すにあたっても、「〇月までに」「〇%アップ」「〇時間削減」など、期間や度合いを具体的な数字に落としこむ必要があります。

    期間と割合をしっかりと数字で定義することで、目標に対してどれくらい達成できているのかを客観的に把握できます。

    達成度合いの把握は、目標実現の確度を高めるだけでなく、至らなかった点の反省としても有用です。

    また指標の明示は、従業員が組織の目指すべき姿を具体的にイメージするためにも必要であり、一人ひとりのモチベーションを引き出す目的もあります。

    業務効率化の成果を図る指標例

    業務効率化の成果を図る指標例

    業務効率化の目指すところとして、具体的にどのような例があるのか、また基準となる指標の考え方について解説します。

    KPI・KGI・KSF

    様々な業務の指標として使われているKPI・ KGI・KSF ですが、言葉の意味としては以下の通りです。


    ■KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)

    企業や組織の目標達成度合いを定義する際の計量基準群。

    KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)

    企業や組織が展開するビジネスの最終目標となる指標。

    ■KSF(Key Success Factor:重要成功要因)

    企業や組織の経営戦略実現のためには、どのような要因が必要であるかを定めたもの。


    KPIは、KGIを達成するための細分化された目標群であり、KPIをすべて達成することによってKGIも達成されると言えます。

    KSFは、KGIを達成するために必要だと思われる要素です。

    このKSFの中の具体的な行動目標をKPIとして設定します。

    これらの指標の考え方に基づきながら、業務効率化の目標や指標を設定することで、達成度合いを確認しながら効率的に活動を進められます。

    「業務効率化」というおおまかな目標をもっと細分化し、 自社の状況と照らし合わせながら、KPI・ KGI・KSF にあてはめて検討してみましょう。

    指標例①売上の増加

    業務効率化の目指すところとして、「売上の増加」が挙げられます。

    KPIやKGIとして設定する場合には、「前年比〇%アップ」「売上〇円」など、具体的な数字を使って指標を設定しましょう。

    一口に「売上の増加」といっても、そのアプローチは業界・業種によって様々です。

    どのような業務効率化のアプローチによって売上アップを実現できるのか、実際の業務と照らし合わせて検討しましょう。

    • 客単価のアップ
    • 顧客数のアップ
    • ECのアクセス数アップ
    • クレームや不良品の削減

    指標例②費用の削減

    前項の「売上の増加」に通ずる部分もありますが、費用の削減も指標の一つとなりえます。

    同じく「××費を〇%削減」「〇円削減」のように、具体的な費用とその割合を数字で定義しましょう。

    費用のカットに注力しすぎてしまうと、営業やプロモーション・サービスが弱体化してしまうことも考えられるので、慎重に検討すべきでしょう。

    • 人件費・残業代の削減
    • 交通費・移動費の削減
    • 事務用品費の削減

    指標例③残業時間の削減

    残業時間の削減は、残業代の削減につながるのはもちろん、従業員の働き方改革にも繋がる重要な目標の一つでもあります。

    業務の過多や繁忙期、人手の足りなさなどから、残業が多くなってしまう企業も少なくないはず。

    残業の過多は、人件費がかさむだけでなく、従業員のモチベーションや生産性を削ぐことにも繋がり、企業にとっていいことがありません。

    • 一人当たりの月の残業時間を〇時間削減
    • 残業代を〇%削減

    業務効率化における指標の定め方

    業務効率化における指標の定め方

    具体的な指標設定の流れを解説します。

    ここでは、前項で解説したKPI・KGI・KSFを使った指標策定の流れに沿って考えます。

    ①KGIを設定する

    まず企業や組織として、目指すべき大きな大目標を設定しますしょう。

    「どのくらいの期間で、企業や組織がどのような姿になっているべきか」という視点で考えます。

    割合(%・割)や金額(%・円)、また達成したい期間などの具体的数値を用いて、後々検証しやすい目標を設定しましょう。

    業務効率化の観点で言えば、前項の通り「売上の増加」「費用の削減」「残業時間の削減」などが一般的にどの企業でもあてはまるといえるでしょう。

    その他にも製造業であれば「生産数の増加」、建築業であれば「工期の短縮」など、業界・業種によって、様々なKGIが考えられます。

    これらの大まかな目標に沿って、具体的な期間と割合目標を指標として定義します。

    例) 「Aチームでの売上を1か月あたり××円にする」
    「1か月の残業時間を一人あたり10時間以内におさめる」
    「部署内の交通費・移動費を〇円以内におさめる」

    ②KGI達成に必要なKSFを考える

    KGIに対し、これを叶えるためにはどのような要素が必要であるか、様々な要素に分解して仮説を立てます。

    これがKSFにあたります。

    自社の強みや弱み、顧客のニーズや不満点など、自社が置かれている内的・外的状況を多角的に分析し、検討する必要しましょう。

    自社の状況を顧みず、一般的な例などを取り込みすぎてしまうと、現実離れな内容や的外れな内容になってしまいます。

    自社の状況や、取引先・顧客の状況をしっかりと洗い出して分析することが重要です。

    しっかりと情報を精査し、現実に則したKSFを策定することで、KGIの実現性も高い本質的な指標設定がおこなえます。

    例)「1か月の残業時間を一人あたり10時間以内におさめる」をKGIとした場合
    →「従業員のスキルアップ」「業務の削減」「業務環境の整備」

    ③KSF実現に必要なKPIを設定する

    それぞれのKSFに対し、具体的な行動目標の指標としてKPIを設定します。

    KPIもKGI同様、具体的な数値を用いて、検証できるような指標設定にする必要があります。

    1つのKSFに対し、KPIは複数あっても構いません。

    1つの要素の中で、必要だと考えられる関連性の高い行動を洗い出してみましょう。

    実現できる行動を、期間・割合・人数など具体的な数字に落とし込みながら指標として設定します。

    例)
    KSF1: 「従業員のスキルアップ」
    →研修回数を1か月に1回開催する、資格取得者を〇人以上にする

    KSF2: 「業務の削減」
    →会議の回数を〇回に削減、システムを導入し業務量を〇%削減

    KSF3: 「業務環境の整備」
    →社用携帯を〇か月以内に全員に配布、〇か月以内に××のソフトを〇人分導入

    指標設定の際の注意点

    指標設定の際の注意点

    指標や目標を数値的に設定することは重要ですが、その指標を追いかけるあまり、陥りがちな問題点もあります。

    注意するべき点をしっかりと把握しておくことで、誤った業務効率化の推進を防ぐことに繋がります。

    現状に則した施策や指標を考える

    指標や施策を策定する担当者や担当部署が、現場の状況をよく把握せず、現実と乖離した目標設定や施策をおこなってしまうことがあります。

    現実に即していない目標設定は、従業員のモチベーションの低下や業務負担の過多などを引き起こす可能性があります。

    また「どうせ達成できない」という思いがあると、従業員の自発的なく協力や工夫を引き出せず、成果を上げることも難しくなってしまうでしょう。

    業務効率化の指標や施策を検討する部署や担当者は、実際に改善対象となっている職場や従業員の状況や事情をしっかりと調査し、その上で現実的な目標を定めていく必要があります。

    個々人においても業務効率化の指標や目的を周知させる

    設定した目標をしっかりと周知し、組織全体で協力しながら取り組む必要があります。

    せっかく指標や目標を定めても、従業員一人ひとりが正しく理解できていないと、形だけの取り組みとなってしまい、思うような成果を得られません。

    また業務効率化は、一人ひとりの意識が重要であり、個々人の工夫や協力があってこそ達成できるものでもあります。

    「何のためにおこなうのか」「何のためにこの数字を目指すのか」など、指標の数字だけでなく、その設定の背景まで従業員にしっかりと落とし込むことが重要です。

    従業員一人ひとりが、自発的に目標達成を目指せるような意識づくりにも力を入れていきましょう。

    数字にとらわれすぎで無理が出ないように注意する

    数字を追うことに注力しすぎてしまい、業務に無理が生じてしまうことも考えられます。

    また業務効率化の数字を目指しすぎることで、サービスの低下や従業員のメンタルヘルスの悪化など、思わぬ面で悪影響が出てしまうこともあり得ます。

    会社として目指すべきことは業務効率化だけではありません。

    業務効率化を目指すあまり、おろそかになってしまう点がないかもしっかり注意するべきです。

    業務やサービス面などそのほかの面において、無理が生じているかもしれないと感じられた場合には、指標や施策の再検討も考えるべきでしょう。

    まとめ:適切な指標管理で業務効率化を確実に達成しよう!

    まとめ:適切な指標管理で業務効率化を確実に達成しよう!

    本質的に業務効率化を実現したいのであれば、目標や指標の設定は重要です。

    しっかりと指標を設定することで、進捗度合いや達成度合いを確認しながら、施策を進められます。

    また指標を明確にすれば、組織の全員が目指すべき姿を具体的に理解できるので、結束力や行動力も高まる期待もできます。

    逆にあいまいな指標設定をおこなってしまうと、従業員がよく理解できず、ないがしろになってしまう可能性があるので、丁寧に指標を考えることも大切です。

    すぐに施策を考えて実施したいところですが、KPI・KGI・KSFの概念を利用しながら、ある程度の時間をかけて慎重に指標設定をおこないましょう。

    本質的な指標設定と正しい指標管理が、効果的な業務効率化を実現するといえるでしょう。