業務効率化を目指すといっても、何から始めればいいのかわからないという企業も多いのではないでしょうか?
本質的な意味での業務効率化を目指す上では、まず目標設定が重要です。
的確な目標設定は、社内環境の改善やサービス向上を実現できる、効果的な取り組みに繋がります。
業務効率化を目指すにあたっての目標設定の重要性や流れ、具体的な目標案について解説します。
目次
業務効率化の目標を設定する意味

「業務効率化」というと、作業の自動化や作業プロセスの簡易化をイメージする人も多いかと思います。
では、なぜこのような対策をおこなうのでしょうか。
これといった目的もなく、システムを導入したり人員を削減したりしても、意味がありません。
大事なのは、解決したい課題を意識することです。
業務効率化の取り組みは、単に時間や人員の削減を指すばかりではありません。
業務の効率化自体が目的なのではなく、その先にある課題解決や生産性の向上が本当の目的なのです。
「業務効率化には何ができるか」ではなく「○○の課題を解決するために業務効率化が必要だ」という考え方です。
目標設定は、この課題意識を明確にします。
現状と課題をしっかりと把握し、適切な目標の設定が、効果的な業務効率化を後押しするのです。
業務効率化の目標設定と実施の流れ

とはいえ漠然とした目標や高望みすぎる目標では意味がありません。
実現を目指せるような具体的で現実的な目標を設定するためには、状況把握から丁寧におこなう必要があります。
自社の状況を把握する
まずは従業員の労働環境や業務内容を把握します。例えば、
- 各部署や拠点との連携がどのようにおこなわれているのか
- それぞれの業務は何がおこなわれているのか
- どんな業務にどれくらいの時間や人員を割いているのか
- お客様からのサービス評価はどうなのか
- お客様からの評判が悪い場合、何が理由になっているのか
- 従業員の勤務満足度や離職率はどうなのか
などを詳しく調査します。
部署や個人、時にはクライアントから、現状と課題をヒアリングするのも良いでしょう。
元々、問題で提起されていた内容があれば、その周辺から状況を調べたり、大きな課題から逆説的に問題を想定し調査したり、アプローチの考え方は色々あります。
正しく課題を整理するためにも、徹底的な現状把握が大切です。
課題を洗い出して整理する
自社の状況を踏まえて、次は課題を整理します。
企業での大きな課題だけでなく、セクションごとの課題や問題点を洗い出すなど、細分化した課題把握が重要です。
漠然とした課題や大きすぎる課題では、アプローチの方法を考えるのが難しくなってしまいます。
後々具体的な方法や目標設定に落とし込みやすくするためにも、課題を詳しく理解しましょう。
課題ごとの目標を設定する
それぞれの課題に対して目標を設定します。
人的・費用的リソースを考慮しながら、目標を設定しましょう。
また場合によっては、長期的な目標から短期的な目標まで、課題解決に向けた段階的な目標設定を心がける必要があります。
「〇%削減」「〇時間削減」など具体的な数値目標の提示で、効果測定も明確になります。
おざなりな取り組みにならないよう、具体的な期間や目標時期も設定しましょう。
具体的で細分化されたゴールの設定で、必要なタスクがイメージしやすくなります。
目標達成に向けた具体的方法を実施
課題に向けた目標が明確になったら、具体的なアプローチ方法と必要なタスクを洗い出します。
それぞれの担当者も割り当て、実際の業務に取り掛かりましょう。
業務効率化に向けた取り組みは、それ自体が初の試みである場合もあるため、行動の結果をしっかりウォッチする必要があります。
やってみると新たな問題や課題が発生するかもしれません。
また思ったほどの効果が得られない場合も考えられます。
せっかくの取り組みが立ち消えにならないよう、しっかりと状況把握と結果観察を随時おこない、改善が必要な場合は対策します。
PDCAを回しながら目標を目指すことで、取り組みもより効果的に作用するでしょう。
業務効率化の具体的な目標例

業務効率化の目標は企業の状況によって異なりますが、考えられる目標例を挙げてみましょう。
生産性向上による売上アップ
売上アップはすべての企業の大きな目標ですが、どのような面からアプローチするかにフォーカスして目標を設定してみましょう。
決まった作業をフォーマット化・パッケージ化して作業効率を上げることで、取り組める案件を増やせば売上アップに繋がります。
またこれまで人が対応していた作業の自動化で、一人の人的リソースを確保できます。
他にも教育マニュアルやトレーニングシステムを強化し、新人の早い即戦力化を目指すことも業務効率を上げる1つの策です。
直接的に売上UPを掲げた目標よりは、間接的に売上に繋がる策を考えるというのが筋です。
扱っているサービスや商品の特性と照らし合わせながら検討してみましょう。
・業務ツールを整え、納期を〇日以内におさめる
・○○の業務をITツールを使って自動化する
・○○の業務をシステム化し〇日以内での完了を目指す
・トレーニングプログラムを構築する
・マニュアルを作成・整備する
ワークライフバランスを整え人材を定着させる
長時間労働や多大な残業は、社会的にも大きな問題になっています。
従業員の心身を疲弊させ、パフォーマンスや生産性、仕事に対する意欲が下がります。
労働時間や環境が整備されれば、従業員はプライベートも充実できるでしょう。
仕事や企業に対する従業員の満足度も上がり、パフォーマンスも向上します。
ワークライフバランスが整った企業は、従業員も定着しやすく、優秀な人材やノウハウの流出も防ぎます。
残業代や休日手当などが増えると、企業も無視できない大きなコストに。
労働環境を整備し残業を減らすことで、人件費削減にも繋がります。
このように労働環境の整備は、企業活動そのものを良いサイクルに導くのです。
労働環境の整備といっても、労働時間を削減や職場環境の負荷削減、業務量の削減など多角的なアプローチが考えられます。
現場で問題になっていることを明確にし、自社に適した方法を検討する必要があります。
・離職率を〇%下げる
・残業時間を〇%下げる
・在宅勤務人員を〇%上げる
・有給取得を平均〇日に上げる
作業効率の改善やミスの削減
「作業効率が悪く時間がかかってお客様をお待たせしている」「ミスによるクレームが多い」などの課題に対しての目標です。
作業効率が改善できれば、お客様を待たせる時間が減り、サービスが向上するだけでなく、従業員の労働時間も削減できます。
ミスやトラブルも、サービスに対する信頼が損なわれるのはもちろん、対処時間を取られてしまう大きな課題です。
お客様だけでなく、社内的にも大きな課題や損失となりうるミスや作業効率の悪さは、迅速に改善する必要があります。
・配送日数を〇日以内にする
・問い合わせ回答を〇日以内におこなう
・納品ミスを0にする
・顧客アンケート評価点を平均〇点に上げる
業務効率化の目標を立てる上でのポイント

実際に目標を立てるときに考慮したいポイントです。
無理のない運用のためにもしっかり意識しましょう。
担当者の他の業務との兼ね合いを考慮する
新しい取り組みは慣れないことも多く、初めは混乱することも。
新しいITツールを導入する場合などは、導入時の作業が必要になったり、新しく覚えないといけないことが増えたりします。
しかも多くの場合、普段の業務と並行して、作業をおこなわなければなりません。
担当する従業員が、いつもの業務も滞りなく進められるよう、余裕を持った目標設定を心がけましょう。
時間的にも作業量的にも考慮が必要です。
無理な目標設定は、従業員の負担になりかねず、やる気が削がれるばかりか、取り組み自体にも支障をきたす恐れがあります。
段階的な目標を心がける
大きな目標や中長期的な目標に対しては、より細かい目標の設定で、最終目標の実現をイメージしやすくなります。
また最終目標に対するズレも都度確認しやすくなるため、修正しながら取り組むことが可能です。
担当者の意識を維持すためにも、実現が見込めるわかりやすい小さな目標が必要です。
自社の状況に合わせて目標を考える
業務の内容や課題は、企業によって異なります。
また業種や業界、職種によっても目指すべき姿や問題点も異なります。
他企業の事例は参考になりますが、そのまま自社にあてはめることはできません。
しっかりと自社の状況や課題を分析し、それに合った目標設定やアプローチが重要です。
他社の事例もヒントにしながら、自分の企業には何が必要なのか検討してみましょう。
同じような業界や職種、また似たような規模の企業の事例は参考にしやすいかもしれません。
厚生労働省の「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」でも様々な企業の事例を詳しく知るできるので、参考資料としてオススメです。
まとめ:業務効率化では目標を意識した施策計画が重要

業務効率化を図る上では、自社の問題点にフォーカスした目標設定が重要です。
また目標に対して、ちゃんと取り組みがおこなわれているのか状況を把握や、結果の測定も忘れてはいけません。
新しい取り組みは、なかなか定着せずおざなりになってしまったり、取り組みそのものが立ち消えになってしまったりすることもあり得ます。
せっかくの業務改善も徹底できなければ意味がありません。
推進担当者が積極的かつ継続的に行動するのはもちろん、状況把握やプロジェクト管理も注意しておこないましょう。
また業務効率化には社員一人一人の意識も必要不可欠。
新しいツールの導入や改善策を提示するばかりではなく、社員の意識改革にも力を入れるべきです。
本質的に業務改善を推進していくには、一つのプロジェクトとして向き合いながら取り組むことがポイントです。